体験記

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吹奏楽コンクールレポートより  8月3日

心を届けたソロ 木管長K子

 お疲れ様でした!本当にただ「楽しかった」の一言です。

 自由曲「詩人と農夫」の楽譜を手にして早2ヶ月、正直ここまで上達できるとは思っていなかった。 …初めてあのベルリンフィルのチェロを聴いたとき、私はなぜか自分が演奏しているような錯覚に陥っていた。

 思えば昨年12月、「こもれび」での本番にビゼーの「アルルの女」を演奏してから、私は大きく変われたと思う。 当時3年生の先輩たちが受験のため休部されている間に、少しでも先輩に近づけるようにと必死で練習した。 そして、「こもれび」でソロデビューの機会をいただいた。ここで自分に大きく自信がついたような気がする。

 さらに4月16日に市民会館で聴いた室内合奏団クレメンティアのコンサート。 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲を弾いた海和伸子さんと一体化したようなあの感覚。 吸収できるものは全て吸収し、私の「詩人と農夫」ソロを完成させることができた。

 そして今日、千葉県文化会館で12分間のステージ中約1分間、緊張やら何やら部員全員の気が私一人に集中した。 それに応えるべく1音1音を大事に奏でなければならない。でも、不思議なことに全然緊張しないで、 普段通り何一つ変わらない演奏ができた。これには自分自身すごく驚いている。

 前日までの練習はそこそこの出来だった。しかし前日、そして当日の朝、どこか1カ所は失敗していた。 不安はただただ増すばかり。その時、ある言葉を思い出した。「上手く吹こう、きれいに吹こうなんて考えないで、 届けようって思えばいいんだよ」。2年前、私が合奏試験の「はじめてのソロ」を受ける直前、 もう誰だか覚えていないけれど先輩から言ってもらった言葉だ。

 まさにその通りだと思う。演奏の質も技術も大切だけど、何より忘れてならないのは「心」だろう。 心の無い言葉は人の心に響かないのと同じで、心の無い演奏も人に感動を与えることはできない。 今日の出場校の演奏にも心の伝わってこない演奏があったように思う。 ここで私は改めて、客席に届けようと思って演奏する音楽と、失敗しないようにとばかり考えて演奏する音楽の差がこんなにも大きいことを実感した。

 審査員からいただいた講評に私のソロのことが書いてあってすごくうれしかった! 「届けよう」がちゃんと伝わったのかな…。今日の「詩人と農夫」は制限時間の関係上カット部分が多かったけれど、 これからは全曲ノーカットでできる! 残りの演奏機会はすべて満足いくように演奏したいと思う。